「The alien cries while laughing.」
真夜中、コンビニに真っ白いミルクを買いに行く途中、信号燈の傍らに立つ標識の男がさらにその傍らの児童に猥褻なことをしながら笑っているから反吐が出そうで俺はイラついていたそして悲しんでいた。この惑星の標識の材質が金属の何であるかは知ったこっちゃあないけどイラついていてイラついていて俺はイラついていて悲しんでいたから標識の支柱を笑いながら思いっきり蹴飛ばした。こうなることはわかっていたが激痛で呻いた。この痛覚を持って歩き続けるのは俺にとって困難なことだとシャロンが電波飛ばしてきたから左足の親指と人差し指と中指を引き千切って夜なのにやたら青く発色する血で真夏のゆるいアスファルトの安穏を台無しにしながら歩き続けた。
コンビニの前で座り込んでいる頭の悪そうな少年たちの話し声が聞こえて来た。「それで姉貴が男とセックスするから出て行けって言うから発情したブスは死ねばいいのにって思いながら結局Yの家に行って…」と口にしていたその中の一人の頭を両手で鷲掴んでワインのコルク引っこ抜くように爽快に引っこ抜いて一メートルぐらいの鮮血噴出しながらコンビニの硝子に色彩を施した少年の首からうえを軽蔑するように見つめて赤い血で汚れたその頭部の唇に愛しいものにするようにやさしく笑ってキスをしてから打っ棄ってコンビニの自動ドアを凱旋した。
少年の血でお気に入りの宇宙服が汚れて腹の辺りの布地が張り付いてきてただでさえ真夏でうだるような湿度が不快でしょうがないのにいっそう不快で不愉快だから「いらっしゃいませ」と微笑むまあ器量のいい店員の女にレジで1.5リットルのミルクを手渡すときにミルクを手に取ろうとした女の細い右腕を乱暴に掴んで、えっ、と驚いたその表情にまた恋するものにするように笑ってキスをしてもうそのままレイプしてやろうかと思ったけどなんとなくやめて、ミルクの代金とか面倒くさいから二百円ぐらいだろと銀色に光る百円硬貨を二枚残して釣りはとっとけとか使い古された台詞をとくに言うでもなくコンビニを出た。
さっきの不良少年たちがみんな携帯で狂ってるように悲鳴みたいな絶叫みたいなもうカオスな賛美歌を歌っていて、そのうちの独りだけ少し高い声でいいテノールだなと思いながらソプラノでしかない俺は最近好きになったアメリカのロックバンドの旋律だけを意識しながら大切なものに囁くように歌って住宅街の静寂を少しだけ微動させながら笑って闊歩した。
左足からはやっぱり青い血が流れ続けていてアルファルトは悲しむように少し波打っていたから立ち止まって地面に手をついてやっぱりかけがえの無いものにするように笑ってキスをした。
そのままそのアスファルトに頬を寄せて目を瞑ってアスファルトの脈動に耳を澄ました。
ロックだ。俺はクラシックが好きだけどこの惑星を振動させているものはロックだった。その音を演奏するバンドにはひとりヴァイオリニストがいて、日本人の血を引いているらしい。その血はやはり赤いのだろうか。足から流れ出し続けている俺の血が青いからやっぱり俺は太陽系を外れた冥王星の衛星軌道あたりのデブリみたいな星に独りで生息している宇宙人なのだろうと思った。
地球では、生きるのが、難しい。酸素が、不味い。呼吸が、辛い。咽喉が、痛い。生きるのが、辛い。一人が、悲しい。独りが、寂しい。
「やだ僕ったらやっぱり絶望!」
って笑って叫びながら俺は家代わりにしている公園のジャングルジムの天辺に登ってポケットから取り出した一粒のキャラメルを口に放り込んでその甘さを舌に絡めながらミルクを一口飲んだ。甘くて、甘くてやさしくて泣きたくなった。泣きたくなったのに泣きたくなったのに人間みたいに上手に泣くことが出来ないから宇宙を仰いでUFOでも通らないかなって思いながらやっぱり笑ってる。素敵な流れ星でも見えないかな見えないかな見えないかな此処に落ちてくればいいのにって思いながらやっぱり笑ってる。
心臓なんか笑い転げてる。
ああ俺の泣き顔はこういう飛びっきりの笑顔なんだと、生まれてはじめてやっと気がついた。気がついたよ、シャロン。