「シネマ」

セルロイドの有燃性がとても大切なことなのです

羊水が酷く冷たいから
心臓が凍結していて鼓動を打たない
陽が射さない永遠は
涙を結露させて
青だけが垂れて流れてゆきます

電線が街を覆い
あなたへの告白がそれに囚われたまま
足の長い蜘蛛が何匹もいる空は
雨上がりで
雲ひとつ無い
あの薄水色に羽ばたいていったなら
けれども
絶えてしまうかもしれない
あの美しい掌に
拒まれたら死んでしまいそう
だから僕の告白は電線に絡まったまま
鳥達に啄ばまれ
蜘蛛に食べられた方が
いいのかもしれないと
俯く
水溜りに僕が映らないのを

長い廊下が螺旋状で放課後に伸びる
白いボールが
数学教師の前に
円周率を落として転がってゆく
3から始まって
全ての数字を
同級生たちが
みんな拾ってゆく
暗い校舎に響き渡るチャイム
運動場へ駆けてゆく同級生たちが
廊下を走るなと教師が注意するのを
聞き流して
ひかりのなかへ
まるで溶けてゆくみたい
野球をしている
ああ
数字を拾わなくちゃいけない
けれど僕の円周率は
無限に続いていて
僕はいつまでも廊下を駆けている
野球がしたい
教師が
廊下を走る僕を気にも留めないのを

羊水の中でライターを点す
フィルムがfinから燃えてゆくのを見ている
あなたへの告白
ミットと白球
僕のロードムービーが激しく燃焼して
プロローグすら燃え尽きてしまう
僕は胎内で
残った微かな熱をして指先を暖めながら
永遠に生まれないのを
ただ当たり前のこととして
呟くのです

好きです

それから

ナイスバッティング

二つの台詞が
羊水にたやすく溶けて青になる
僕がいのちを結ぶ前の冷たい無にかえってゆきます

凍えそう
だから
セルロイドの有燃性がとても大切なことなのです