向日葵の青燃える、独房

竦む程の暗夜に膝や肩を沈めて、
帳から滴るものに濡れる髪に、頬に、弱い表皮に
淡くのることもない光彩を希う毎秒を
僕は

融けきっていて

終わりを知らないような暴力的な連続のなかに
うつろうこともなく僕は
囚人所以の厚く重い目蓋を
微かには持ち上げて
持ち上げて、見る
嗚咽や汗や垢に汚れされた指でやはりあなたをひたすらになぞろうとする

固いコンクリートに、
一本伸ばした人差し指はインフィニティ描いて
此処が放たれることのない独房だともう遠の昔に知っているのに
呼吸をまた
吸って、
吐いて、
いまもリピートするのは

見えることも無かろうその肌に滲むひかりに
それでも毎秒救われているからなのです
それは信仰そのもののように
縋る僕に慰みひとつを感ぜうることを許している

ひかりは僕の全ての何をも照さないから
あの天井の染みのように暗夜に融け入ったままでやはり僕は
輪郭を淡く浮かばせることも
結ぶこともない
その水面を凪に昏睡させたまま漣のひとつも走らない暗夜の底に
沈殿していて
僕は
流れない暗さの只中に
遠く響く夜行の何らかの警笛のその方角すら掴めず
煩い前頭葉を擡げる
広げたい、
羽根を
羽根を広げるような真似をしてみることも許さない独房の狭さに
息が詰まりそうになるのを必死に
吸って、
吐く、
それを
天井の染みに潜む鴉が凝視している
麻痺しているのか壊死しているのか感覚の全てをそれでも
あなたというまばゆい幻想に委ねながらやり過ごす全人生という刑期
あのひかりが僕を照らさない
けれど
吸って、
吐く、
酸素が甘い、甘いのです
落雁のように儚く静かにそれでも僕を刺激する甘味を
ただそれだけを糧に僕は
購う為に生きているのです

吸って、
吐いて、
吸って、
吐いて、
僕の二酸化炭素を愛する花はきっと向日葵なんだろうという喜び
太陽のように咲いて青を燃やす向日葵の
燃えてゆく青にまた酸素が歌われる

暗夜に咲く一輪の向日葵が太陽

独房は永遠に光彩を知らないけれど向日葵は信仰に応えて揺れている
そう信じてやまず
気管支と肺と心臓を信仰のようなものに捧げている

暗過ぎる生=罪という暗夜が明けないなかに僕はリピート
吸って、
吐いて、

吸って、