月面テロル




余興。
喉を鳴らしてごらん。
るるる、とか、しゃらら、とは鳴るまい。
裏返る音域に放つ、透明な。
これは、
図鑑で見た脊柱までも透き通るゼラチンで出来た稚魚のそれだ
彼らの秘密の息継ぎで僕たちもまた酸素を愛しているのだ。
全体、この膜の中に酸素があったかどうかは知れないことだと言いもするが。
やはり酸素を愛して止まないのが僕らだった、と言い述べるのだ。

くらい時代だから。

零時きっかりに魚卵が爆発する。
テロル、だ。




捲れあがりその下から垂れているものを何か当ててごらん。
涙とか、涙とか、
そのような退屈なものではなくてね、だってあれら直ぐに霧散してしまうだろう。
これは。潮の残していったシアンとかだよ。
静かの海にて泡立ち砕け、
管状鐘の音でこの皮膚にもまさに染み入ろうとしている、色だよ。
お前、お前、翅が綺麗だね。触ってもいいかい。
勿論、そっと、だよ。
零れてしまう。




テロルに。
喰われているのだ、月が。
部分的であるから夕食には間に合うように、間に合うように。と
正しく並べられてゆくフォークとナイフ、
さっきの稚魚たちはすべからく調理されあたらしく誕生した。
銀食器の輝きに嘘を隠せないでいるのは僕だけれどもお前はどうだい。
スライス、
お前、マネキンだったのかい。
全ての関節にねじ込まれている螺子が酸化していて
酸っぱいと顔をしかめている、悲劇。
節目に、隠していたのだ、細い細い導線。
お前は魚卵を両腕に抱えて
火を点ける合図
一にも二にも、畢竟、美しい爆破を夢見る。




お前の指はまだ美しく完結されている侭だ。
柔らかい鍵盤に安息を見出してはどうだい。
軽やかな風を呼び込む指の運び
飛び立つ、
お前の翅、綺麗だね。
草いきれに巻かれてしまうでないよ、
何にも捕らわれず垂直に落下して僕らは
彼の美しい爆破を、見上げる、という位置から見届けるんだ。

零時きっかりの美しい爆破。
魚卵の誘発による熾烈な、爆破。

月が割れ。
血が垂れてくる、

くらい時代だから。




水煙に瓦解する世界。
それでも
やはり酸素を愛して止まないのが僕らだった、と
僕らは青く青く言い述べるのだ。