infinity、または隔夜。


ひたひたとあなたが。あなたのようなものが展開している。
此処を満ち、満たして、極めて滑らかな喪失。喪失のような表情で真白な昼の月をふたつ浮ばせている。
あなた、と。あなたの幾重にも重ねられた層は、ぬるさを知らない冷たい血と球体細胞たちの美学で構成されている。
〈世界〉が、冷やかさを湛え口角を少しだけ持ち上げて静かに笑う。
男性器を模したポールに上品に腰掛け燻らせている煙草で弧を描いている。眼前に横たわらせる8、は喫む煙草の銘柄に因むinfinity。

「孤独 は美しく鳴らす、
「生きとし生けるものは皆すべからく楽器ですから
「ええ
「いい音を  つまり、
「在る為に
「棄たれぬよう
「〈世界〉は、我儘な恋人なのです。僕らは
「哲学に殺されて死んだ〈神〉の為に葬送曲を奏でているのです
「僕らはみな一人残らず其の為の楽器ですから 
「きみも楽器には違いない 
「〈在る〉のだから、現象としては しかし
「きみは打ち込みです
「きみの音は電子の0と1でしかないのです。この音、 まるで薄い
「きみはかなしい楽器 だ
「0がきみ、1が彼女  または
「1がきみ、彼女が0だったのか、いずれにせよ(binary)の、かなしい楽器です
「オーケストラには、
「要らない音だと言われるでしょう、言われるでしょう、いつも〈世界〉に。
「だからきみは、いつも
「そのように笑っているのですね、わかります。

境界面に、触れる。冷たい。冷たさを感じる僕の指が、震えると微かに鳴る音、やはり電子音。波が、短く淡い。
剥離するような微かな音を鳴らしながら旋律。
臨界角を、遠く忘れ僕は鳴りながら透過。核へ、向かい。潜る一夜。
僕の在る夜は、全て、称して〈世界〉から綺麗に隔絶されあなたという現象の深淵に内包される。
深いところへ、また上方へ。浮かび、また沈み、を。ゆっくりと繰り返すふたつの月は、僕を挟みいまも運動を繰り返している。その、丁度真ん中に、僕は浮ぶ。僕は、輪郭を持たず光を持たず、けれども<在る>現象として夜に浮び、新月。
新月という円い楽器、電子楽器を、あなたが気紛れのやさしい所作でなぞり、気紛れの下唇で奏でる。鳴る。電子音。電子音。電子音。鳴る僕、青く、
エフェクターが柔らかい女性器。濡れている。濡れているのを舐め、垂れる液体に溶け滲む電子音。僕は青く入射。
糸を引き、舌先を染めるのも、青。青であるから深淵で一色、発色する、音。
海が青い理由、を。知る側のひと、の孤独。
ひたひたとあなたが、あなたのようなものが展開している。。
此処を満ち、満たして、真夏の梢の先端に夜も照り輝く緑青を揺らす。散るような、音も交え。
滑らかな喪失のような表情。の、境界面に、触れ。
臨界角を、遠く忘れ僕は鳴りながら透過。入射する僕が、深く。深く。青く。潜る。
隔夜。
連れ立って絡まる紫煙。紫煙と、アルコール。気泡を遊ばせる闇に透過。鳴りながら、僕は深く。潜り続けている。
伸べる指先に心臓を、掠める。あなたの核が。美学を重視して美しく鳴る、
旋律。

「恋人である〈世界〉、彼女のなかに
「infinityは、二つあります ひとつは
「孤独、 そして
「敢えて交差させず逆方向に加速させる
「音。
「完結を知らないそれら は、
「長い間奏の退屈を凌ぐには 丁度いい、
「距離や空気を重視し、
「きみのような音は隔て
「きみは隔てられるから笑っているのですね、わかります。
「まあ、
「けれどだらだらとこのようにも、こんな夜。
「でさぁ、

くらい音楽が、其処や彼処で演奏されている一夜。綺麗に隔絶される一夜。に。
僕は、浮び、見えないままに鳴る新月。電子の。
気紛れな下唇による演奏。只管に、揺れ、震え、青く鳴る。音が。密やかに発色。
核に触れ。滲み入り、編み上げられる旋律。

が、

隔てられた一夜に。紫煙に。