「螺旋、詩人、一つの運動。」
青年詩人が絶望の面持ちで歌う詩に
うつくしいひかる楽器による緑線楽の演奏、によって暴力が為されてゆく
たおやか、であるような音はやはり曲線で流れながれ、円を描き、螺旋。
(螺旋という語句一つが紫陽花の紫を殺人する、夜!)
忌まわしいそういった階段をドリーインで導く譜、
降りてゆくのみの階段の途中に、白
白、
白、
白、
もう白ばかりの踊り場、
守られている、陽光と、ああ洗濯糊の匂いのするシーツの上で
守られていて、躊躇い傷を飾って素足でダンスするのはきみという代名詞
「ここにいるのはあなたとあたし、って歌って」
「歌えないよ、なぜなら降りはしない、雨のようには、詩句は」
(台詞が来たる六月の雨を陵辱する、夜!)
ああなんて救いようのない詩が24時間、
敬虔に報道されている世界なのだろう
恥ずかしげもなく露呈されている人生への冒涜だ、と憂う蝸牛の道程を
俺がちいさくくちずさんでみる、これは一つの運動なのだ。
トラックを走る俺は血税と汗と犬のような奉仕を
上へ参ります下で御座います奥で御座いますあたしのなかで御座います、世界は
オーディエンスまたはカスタマーに約束した平和を維持し続けなければならない
ならないのは17時半まで、17時半を回る秒針を分針を短針を渇望して
音も無く律儀にやってくる17時半に俺は
歓喜と、
発破と、
閃光と、
硝煙と、
飛沫と、そして花びらを散らして、
花びらだけが美しいと思っている青年詩人に
俺の漁法を教えてやらなくてはならない、
さあ発破を仕掛けるぞ!
さあ!
ジュゴンを殺せ
妖精を殺せ
迷子たちを殺せ
代名詞きみを殺せ
そして得る俺の生のための糧!
悲恋ではなく発破による犠牲に涙を流し
食前の祈りを遠い園庭に忘れてきた日常の終わりの暗夜、
手掴みで糧を貪り血に変えてゆく貪欲さを
歌う、
心臓を巡る血の熱に奔流に帆を張りまた船出する零時、発破を積む小船を世界はそれでも
愛して止まないのだ、それを
知っているか?
知っているか?
知っているか?
(来たる六月の雨は小船の淵に染み入る、慈愛!)
あなたたちはあなたたちの随分とそらうつくしい恋愛の為に度々この世界を終わらせる
世界の終わり
そんなものを俺はじゃあ人差し指と親指でつまんで
アンチョビーをつまむように、ブラックオリーブをつまむように
油で揚げられた小海老の赤を好んでつまむようにつまんでこの口に放り込むのだ
(世界の終わりを噛み砕き飲み込んでしまった!ああ不味い!冷めたフリテンかこれは!)
ああ青年、
そして鏡の向うの青年それから、永遠であるかのような躊躇い傷の代名詞きみ、という詩人
あなたたちの筆致を俺はこれでも
いいと思っているんだ、自分のそれよりも、さね
痛がりで、
淋しがりで、
卑屈で、
自意識過剰で愚かな陶酔、そして陶酔、それから陶酔
その陶酔で夢描くものよりもまざまざと此処にも其処にも彼方此方そこいらにある
心臓を巡る血の熱を、奔流を、それがただひたすら歌い続ける音、
その音を、
どうか譜に綴って読ませてくれないか
約束した平和を約束したとおりに今日も守り
その労働を終わらせたあとに飲むビール、ベルジャンビールの甘さ
それをこの舌で有り難く味わいながら読書するのならばそういう詩がいい、いいよ
終わらないこの世界
この世界に、あなたが生きているということを
綴って読ませてくれないか、なんて
呟くようにくちずさんでみる、これは一つの運動なのだ。
螺旋、
螺旋、
螺旋、
ああ螺旋がいまも薄緑にひかりながらしなやかに俺の胸に恋愛を鳴らしているけれども、ああ
(やはり螺旋という語句一つが紫陽花の紫を殺人する、夜!)
これは一つの運動なのだ。