「夢夢の色。」
山々の稜線も建築と建築の基線もみな並べて濡れ。ア、と吐息つく間にも粛々と、潜むように青が染み渡る、真夏。
凪いだ花弁の面、繊維の其の際から此処へ。浸透しているあなた。あなたが余りにぬるく、ぬるくも確かに。八月の一夜に色を落としている。
花弁に滴り。
ねえ、あなた。溶け混じる鮮烈な色のうちに淡くもある色々の、夢の色咲き誇り。朧朧の。かようにも、夏はまた。僕に僕であるが故の色を乗せてゆく、淡く。
ねえ、あなた。あなたの、其の人肌の熱ばかりに緩む水が。球となり、連なり、連なり垂れ、糸を滑り。
戯れに弾く其の指の所作により撥ね落ちる。
震う蜘蛛の眠り、かの夢に触れ、また色付く、夏。
練り絹の如く僕に纏わる、夏の。夏の色彩を。
夜にあり、青に満ち、青のなかにありて千紫万紅の仄かを齎す熱を。
ねえ、あなた。僕に触れて、与えたのだろう。
浮腫んでいるのだ!頬が!
飽和しているのだ!僕が!
熱に中てられて!僕が!
嗚呼!
咲き誇るならば今だ!と云わんばかりに熟れているのだ!
ねえ、あの鬼灯のように見事に弾けたなら、僕は残るだろうか。
其の指先に、赤く、赤く。
あなたの指先に微眠みたいと、僕もまた夢。夢を見るのだ。夢の、色で。
あなたの、其の人肌に染み、僕は染み。赤く染みゆきて。ゆけたなら、凪ぐあなたの境界。あなたの指紋の漣から、其処へ。あなたへ。浸透していくだろうか。なめらかに、なめらかに。
僕は仄かにも彩度を紡ぎ起こし震わせ。うるうるとあなたへ。仄かにも賑やかにあなたへ。あなたの静脈へ巡ることを希う。
巡る僕の含有する毒を、あなたは。あなたという人は、憂鬱な。
けれども愉悦の表情で味わうだろう。
僕に酔い、乱れ、暮れればいい。朝が来ようと絶えず。夏ゆえに、暗い時分にはせめて存分に。夢のまにまに。夢の侭。
真夏の朝は冷ややかにあなたを。薄い綿布の如き風であなたを抱擁し、またやさしく撫ぜるだろう。安息のなかであなたは。夢の、色で、夏の色彩で。小さな小さな太陽を描く。
危うくも結ばれようとする太陽の輪郭線、が。赤く燃え、赤く燃え。
其れ故に夏は、嗚呼。ぬるくも確かに熱を持ち、八月の一夜に色を落としている。
色、色々に朧、落ちたなら、
ねえ、あなた。あなたの其の指先でかくあるように夏を呼び。僕に触れ。僕が僕であるが故の色を。夢夢の色を。淡くも、与えて。